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PATIENT患者様へ
Question AND Answer消化器の病気Q&A
Liver肝臓について
- 肝炎はどうしておこるのですか?
肝炎とは、いろいろな原因により肝細胞に炎症がおこり破壊されて肝臓の働きに障害をきたす病気です。
肝炎の原因としては、ウイルスによるもの、アルコールによるもの、薬物によるものなどさまざまです。日本では、ウイルス性の肝炎が多く、約80%程度をしめています。肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型肝炎などがあります。 ウイルス性肝炎の特徴として、以下のようなことがあげられます。A型肝炎
急性肝炎をおこすが、慢性化することはありません。感染経路は、飲食物などの経口感染です。
B型肝炎
乳児期に感染するとキャリアとなり、これが発病すると慢性肝炎になりやすいです。大人になってからの感染は慢性化することはほとんどありません。感染経路は、母子感染などの血液感染や性行為感染です。
C型肝炎
ウイルス肝炎の中で最も多い病気です。感染すると60~80%が慢性肝炎になります。肝癌の危険因子です。
感染経路は、過去の輸血、刺青などのによる血液感染です。D型肝炎
イタリアの一部や中東、アフリカ、南米などに多いですが、日本では少ないウィルスです。感染経路は血液感染です。
E型肝炎
東南アジア、中南米などに多く、急性肝炎をおこしますが慢性化はしません。
感染経路は、飲食物などの経口感染です。特に日本では鹿、猪、豚の生肉摂取により感染する可能性が高いので、中まできちんと加熱してから食べるようにしてください。また生肉をさわった箸で食事をしても感染する危険性がありますので取り箸と食事用の箸は区別するようにしてください。 - C型慢性肝炎とはどんな病気ですか?
C型肝炎ウイルスの感染により持続的に肝炎をおこす病気です。C型肝炎ウイルスの感染が6ヶ月以上にわたって肝臓に炎症が続き、肝臓の細胞が壊れて障害が起こる病気です。慢性肝炎ではほとんど症状はでませんが、肝硬変になると、足にむくみがでる、顔に血管が浮いてくる、こむらがえり(足がつる)といったような症状がでてきます。C型肝炎は、血液感染をしますので、過去に輸血をしたことがある、家族に肝臓の悪い人がいるなどがある場合には一度医療機関を受診しましょう。
- C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した場合の経過はどうでしょうか?
HCVに感染した場合、60~80%は慢性肝炎に移行します。大部分は進行性で肝炎が持続すると肝硬変、肝癌へと進んでいきます。肝硬変になると、肝癌だけではなく、食道静脈瘤、肝性脳症などの合併症も起こりますので、専門医の受診をお勧めします。
- C型肝炎に感染しているかどうか調べるにはどうしたらいいですか?
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかは採血でわかります。 HCVに対する抗体(HCV抗体)が血液中に存在するかどうかを調べます。HCV抗体が陽性の場合、現在HCVが体内にいる場合(キャリア)、もしくは過去の感染のいずれかが考えられます。キャリアか否かは、ウイルスの遺伝子検査(HCV RNA)を行うと判断できます。
HCV抗体陽性でHCV RNA陽性であればキャリアであり、HCV抗体陽性でもHCV RNAが陰性であれば、過去に感染の既往があり現在は治癒したということになります。また、現在の炎症に関しては、AST(GOT)値、ALT(GPT)値が参考になります。AST、ALTは、とくに肝細胞に多く含まれている蛋白質であり、炎症などで肝細胞が破壊されると血液中に流れ出して血液中の値が高くなります。このため、肝細胞がどの程度壊れているかの目安になります。以上のように、肝機能検査(AST、ALT)と各種ウイルスマーカーを用いた検査で診断していきます。
- C型肝炎の治療法は?
治療法には大きく分けて抗ウイルス療法と対症療法(肝庇護療法)の2つにわかれます。 抗ウイルス療法は、ウイルスのタイプが1型でウイルス量が多い患者さんには、これまでのインターフェロン、リバビリンに加え、シメプレビルを併用する3剤併用療法が標準治療となっています。またそれ以外の患者さんはインターフェロン、リバビリンの2剤併用療法もしくはインターフェロン単独療法が行われます。対症療法にはグリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸などがあります。
・インターフェロンは、本来私たちの体の中で作られる蛋白で、ウイルスの増殖を抑える働きを持っています。週1回の皮下注射を行います。
・リバビリンはインターフェロンと併用するとインターフェロンの抗ウイルス効果を増強する内服薬です。
・シメプレビルはウイルスの複製に必要な酵素を直接阻害することで抗ウイルス効果を発揮する内服薬です。 - B型肝炎とはどんな病気ですか?
B型肝炎ウイルスが血液もしくは体液を介して感染し肝炎をおこす病気です。大人の場合は、ほとんどが感染しても急性肝炎をおこし治癒しますが、母子感染した子供の多くは、キャリア(ウイルス持続感染者)となります。しかし、1986年以降は母親がHBVに感染している場合、赤ちゃんにワクチンを接種するため、新たに感染することはなくなってきています。
- B型肝炎の治療法は?
急性肝炎の場合は、安静と栄養補給が治療の基本になります。重症肝炎、劇症肝炎の場合は抗ウイルス剤(核酸アナログ)投与、肝庇護療法を行います。一方、B型慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変)の治療目標は、ウイルスの増殖を抑え炎症を沈静化することで、肝疾患の進展と肝発癌を予防することにあります。そのためインターフェロン、抗ウイルス剤(核酸アナログ)、肝庇護剤などで治療を行います。年齢、ウイルス量、炎症の程度、線維化の程度を考慮して治療法を選択する必要があります。2014年のガイドラインでは、35歳未満ではインターフェロンの長期投与を、線維化が進行した例では核酸アナログを服用する必要があります。35歳以上では核酸アナログが推奨されていますが、インターフェロンを考慮する場合もあります。
このように治療法の選択には専門性が要求されるために、専門医にご相談されることをお勧めします。核酸アナログである、ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル、テノホビル
ウイルスの増殖を抑制する作用が非常に強いお薬です。問題点としては、①中断するとウイルスが再び増えて肝炎が再発すること、そのために長期服用が必要である、②また長期に服用すると耐性ウイルスが出現して肝炎が起こる、などがあげられます。現在は治療効果が高く、耐性ウイルスの出現頻度が少ないとされるエンテカビル、テノホビルが第一選択薬となっています。これまで核酸アナログは胎児に対する安全性は保証されておりませんでしたが、もっとも新しく認可されたテノホビルは他の薬剤よりも胎児への安全性が高いとされています。
インターフェロン
免疫の働きを助けてウイルスを減らす作用のある薬です。35歳未満の方には第一選択となります。但し、インターフェロンの副作用には注意が必要です。
他にもグリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸などがあります。これらのお薬はウイルス量は減らすことができませんが、炎症を抑制し肝疾患の進展を抑えます。 - 献血をしたところ、C型肝炎ウイルス(HCV)が陽性という知らせをうけました。
どうしたらいいでしょうか?HCVの感染がわかったら、現在の肝臓の状態を把握するためにも医療機関を受診しましょう。採血で肝炎の状態はある程度わかりますので、患者様の病態に応じた治療を受けることをお勧めします。
- C型肝炎ウイルス持続感染者の母親からの授乳に注意は必要ですか?
授乳によるC型肝炎ウイルス感染はほとんどないと考えていいでしょう。ただし、母親の乳首に傷があったり、出血している場合は、感染する可能性がありますので傷が治るまでは授乳は控えてください。
- B型肝炎とはどんな病気ですか?
B型肝炎ウイルス(HBV)が血液、体液、唾液などを介して感染し肝炎をおこす病気です。 大人の場合は感染しても急性肝炎をおこし治癒しますが、最近、日本では少ないタイプのB型肝炎ウイルスに感染すると、慢性化(キャリア化)するということが明らかになってきました。
一方、乳幼児期に母子感染などでB型肝炎に感染した子供の多く(90%ぐらい)は、HBVキャリア(ウイルス持続感染者)となります。さらにその中で10-15%の人は慢性肝炎へと進行します。1986年以降はB型肝炎母子感染防止事業が開始され、お母さんがB型肝炎ウィルスに感染している場合、出産直後から、免疫グロブリンやワクチンを赤ちゃんに接種することで母子感染は阻止できるようになりました。 また医療現場での感染対策が徹底されるようになり、乳幼児期の水平感染(母子感染以外)によるキャリア化もほとんど起こらなくなりました。一方、近年では父子感染により乳幼児がキャリア化するということが問題となっています。育児における父親の役割分担が大きくなってきた昨今、お父さんもB型肝炎ウイルスのチェックが必要です。急性肝炎
B型肝炎ウィルスに感染すると1~6ヶ月の潜伏期間をおいて一過性の肝炎を発症しますが、ほとんどの人は治癒します。また医療行為による感染はほぼ皆無といって良い状況です。しかしながら、最近ではB型肝炎ウイルスの中で欧米型である遺伝子型Aに感染すると、2-10% の頻度で慢性化(キャリア化)することが明らかになってきました。特に都市部でこのような傾向が見られるようになっており、性交渉によるB型肝炎ウイルスの感染が、今後キャリアの原因になるという大きな問題になる可能性があります。
慢性肝炎
通常キャリアからの発症で、成長とともに免疫能が発達し、B型肝炎ウィルスを異物と認識し肝細胞を攻撃するため、10台の後半から20台にかけて肝炎が起こります。約85-90%の人は、数年のうちに肝炎が治まりますが無症候性キャリアになりますが、残りの10-15%の人は肝炎が持続し肝硬変、肝癌へ進行します。また、なかには、重症化などの強い肝炎を起こすこともあります。
以上のように、B型肝炎の経過はさまざまですので、治療に関しては患者様それぞれの病態に応じて治療を考えていく必要があります。 - 肝炎ウイルス陽性(HCV、HBV)のときはどんな注意が必要ですか?
日常生活において感染することはほとんどありませんが、血液、体液を介して感染しますので、けがをした場合などに自分の血液が他の人に触れないように気をつけることは必要です。
カミソリ、歯ブラシなど血液のつく可能性のあるものは、他の人と共有しないようにしてください。口移しで乳幼児に食べ物を与えないようにしましょう。また、C型肝炎ウイルスは性行為でうつることはほとんどありませんが、B型肝炎ウイルスは性行為で感染します。
B型肝炎ウイルスによる夫婦間感染は、ワクチンなどで予防できますので医師に相談しましょう。但し、お茶碗を共有したり、お風呂に一緒に入ったりしても周囲へは感染しません。
日常生活でのポイント
1)定期的に検査を受けること
2)アルコールは極力控えること
3)規則正しい生活をすること
4)栄養バランスの良い食生活をおくること
5) 血液が付着したものの処理はご自身できっちりすること - 肝臓がん(肝細胞がん)とは?
肝臓に発生する悪性腫瘍の一つで、その多くは慢性肝疾患を基盤に発生します。肝細胞癌患者さんの約7割はC型肝炎ウイルス、約2割はB型肝炎ウイルスに感染しています。日本では年間約3万人の方に肝細胞癌が発生するとされています。
- 肝細胞がんの症状は?
肝臓の病気は急性肝炎や肝不全状態でない限り、自覚症状がほとんどないのが特徴です。肝細胞がんも大きくなって10cmを越える場合や、肝臓全体に「がん」が多発する状態になっても、目立った症状がないということがしばしばあります。つまりは早期に肝細胞がんの発生を知らせてくれるような症状はない、ということになります。そこでウイルス性肝疾患患者さんは下記のような定期的な検査をうけ、もし「がん」が発見されれば早期に治療を受ける必要があります。
- 肝細胞がんの診断
血液検査
肝細胞がんの腫瘍マーカーであるAFP(エー・エフ・ピー;アルファーフェトプロテイン)、AFP-L3分画、PIVKA-II(ピブカ・ツー)を測定します。AFPは肝炎の活動性が高い時(肝機能が高い時)にも上昇することがあります。また小さな癌や早期の「がん」ではいずれのマーカーも陰性のことがあります。定期的に測定することで、肝細胞がんの出現や治療後の再発を早期に診断することができます。
画像検査
(1)腹部エコー検査(超音波検査)
最も簡便で負担の少ない検査です。1cm程度の小さな病変も発見することが可能です。但し、高度の肥満の方や腸内ガスの多い方では、エコーでは見えにくい場所が多くなり病変の検出感度が落ちます。
検査所要時間:約20分
絶食が必要です、外来にて行います。(2)腹部造影CT検査
エコー検査で病変が見つかったときや治療後の評価のための精密検査として行います。エコー検査と異なり、肥満やガスの影響をほとんど受けません。造影剤という薬を用いることにより、肝細胞がんの性質や大きさ、数などを詳しく調べることができます。
検査所要時間:約20分
絶食が必要です。外来で行います。(3)腹部造影MRI検査
腹部造影CTと同様、造影剤を用いることで肝細胞癌の診断が可能です。CT検査よりも早期の肝細胞癌の検出に優れているとされています。(約1時間)
(4)血管造影(肝動脈造影下CT)
肝動脈内にカテーテルという細いチューブを挿入し、動脈内に直接造影剤を注入することにより肝細胞がんを見つけます。肝動脈造影時に同時にCTを撮ることで、通常の造影CTよりも高感度に肝細胞癌を見つけることができます。
検査所要時間:約1時間
絶食が必要です。入院していただいて施行します。
慢性肝炎の患者さんの場合、腫瘍マーカー検査は4~6回/年、エコー検査を2~3回/年、CT検査を1回/年の程度の間隔で受けていただき、肝細胞がんの監視を行います。肝硬変の患者さんの場合は、腫瘍マーカー検査を6~12回/年、エコー検査を4~6回/年、CT検査を2~3回/年受けていただき、より厳重に肝細胞がんの監視を行います。 - 肝細胞がんの治療
肝細胞がんの治療を考える場合
1)「がん」の状態(大きさ、数、場所、性質)
2)肝臓の状態(肝予備能)
3)その他の合併症(糖尿病、心臓病など)
を総合的に調べた上で、最も有効な治療法を選択することになります。治療法としては大きく2つに分けられます。一つは外科的治療(肝切除・肝移植)であり、もう一つは内科的治療(経皮的治療、経カテーテル的治療など)です。ここでは実際に我々が行っている内科的治療について説明いたします。Ⅰ)経皮的治療法
(1)エタノール注入治療(PEIT:ペイト)
エコーで見える「がん」が対象となります。大きさは2cm程度まで、個数は3個以内がよい適応となります。エコーで「がん」を観察しながら、経皮的に(皮膚を通して)細い針をがん部まで刺入してエタノールを注入し、がん細胞を死滅(脱水凝固壊死)させます。一回に注入できるエタノール量と「がん」の大きさにより治療回数は異なります。
(2)ラジオ波焼灼治療(RFA:アール・エフ・エー)
PEITと同じような「がん」が対象となりますが、一回にできる治療範囲が広いため治療回数は少なくて済みます。エコーで腫瘍を観察しながら経皮的に針を「がん」の部分まで刺入します。ラジオ波発生装置で針の先端に高周波を発生させ、「がん」の部分の温度を上げることでがん細胞を死滅(熱凝固壊死)させます。治療後針を抜くときに肝臓の中の針の通り道を焼灼することで、出血を予防できる利点があります。
Ⅱ)経血管的治療
TACE(経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法)
肝臓は動脈・門脈という2系統の血管から栄養を受けている臓器です。一方、肝細胞癌は主に動脈から栄養を受けるという特徴を持っています。がんの栄養血管である動脈から抗がん剤を投与し、さらに動脈血を遮断することで抗腫瘍効果を発揮する治療法です。動脈血流を持つ病変であれば一度に複数の病変を治療できるという利点があります。
Ⅲ)進行例に対する治療
(1)肝動注化学療法
手術や経皮的治療、TACEの適応とならない進行した例(血管に腫瘍が浸潤したり、肝内に10個以上の病変がありTACEでのコントロールが難しい場合)が対象となります。 具体的には埋め込み型のカテーテルを肝動脈に固定し、太もも部分の皮膚の下に半永久的に埋め込みます。その後は、病棟や外来でも直接肝動脈内に抗がん剤投与することが可能となります。集中的に抗がん剤投与を行うことにより、腫瘍の縮小を期待します。
(2)ソラフェニブ治療
ソラフェニブは2009年に保険認可された抗がん剤で内服薬です。主な作用としては㈰がん細胞の増殖過程の抑制と㈪血管新生の阻害をすることで抗癌治療を発揮します。肝臓外に転移があるなどTACEでのコントロールが難しい例が対象となります。
Liver消化管(食道・胃・大腸等)について
- 胃・十二指腸潰瘍とは?
健康な胃では、胃壁は粘液を分泌して自分自身を胃液から守っています。しかし、胃酸が過剰に分泌されたり、抵抗力が弱まると、胃や十二指腸の内壁を自分で消化してしまい、そこに潰瘍ができます。最近ではヘリコバクター・ピロリ菌が有力な原因の一つであると言われています。ピロリ菌の感染経路は、はっきりとは解明されていませんが、幼少時の主に口を介した感染が考えられています。
- どんな生活をすればいいのですか?
(避けたいこと)
持続的なストレス、コーヒーや緑茶などに含まれるカフェイン、アルコールなどはほどほどに控えましょう。
喫煙は特に禁物です。
寝不足や栄養不足も控えたほうが望ましいです。また、胃粘膜の状態を悪化させる恐れのある薬物(例:解熱鎮痛剤、ステロイドなど)を服用されている方で胃腸症状が出た場合、必ず医師、薬剤師にご相談ください。 - 特徴的な症状は?
腹痛が主な症状です。胃潰瘍は食後、十二指腸潰瘍では早朝や夜間など空腹時にみぞおちが痛むことが多く見られます。背中や、右上腹部が痛むこともあります。胃もたれ、吐き気、嘔吐、胸焼け、吐血、黒色便が見られるときもあり、特に黒色便は潰瘍からの出血が疑われます。すぐに医師に相談しましょう。
- 診断はどのように行うのですか?
一般に問診、視診、聴打診、触診に始まり、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の内視鏡検査、X線検査などがあります。びらんや浅い潰瘍は内視鏡検査のほうが詳しく観察できます。最近の内視鏡は以前に比べ大変細くて柔らかく飲みやすくなっています。
- 潰瘍はどのように治療するのですか?
治療の基本は安静、食事、薬物療法です。80年代以降多くの潰瘍が内服薬で治せるようになりました。胃酸の分泌を抑えるPPI(プロトンポンプインヒビター)、H2ブロッカーという、薬が良く使われています。またピロリ菌を除菌することで、潰瘍の再発を著明に抑えることができます。ピロリ菌の除菌率は80~90%です。抗生物質が効かない耐性菌も存在しますが、確実に除菌するためには少なくとも指示された薬は主治医の指示通り正しく飲み続けることが大切です。
- 食道・胃静脈瘤とはどんな病気でしょうか?
肝硬変に代表される門脈圧亢進症患者さんの致死的な合併症の一つです。肝硬変などのように肝臓が硬くなり、弾力性がなくなった場合、または肝臓内に流入する肝臓を栄養している門脈(血管の名称)の一部に閉塞が起こった場合、血管に対する抵抗が増し、門脈を流れる血液が他の血管にたくさん流れることで、さまざまな変化をきたす病態を門脈圧亢進症と呼びます。その代表的な合併症の一つが食道・胃静脈瘤です。つまり肝臓に送ることができなかった血液が食道の静脈や胃の静脈を通って心臓に戻るために、通常では見られない程に食道静脈、胃静脈の血管が太くなり拡張します(この拡張した血管を静脈瘤と呼びます)。そして食道や胃は、普段食べ物などが通過するところですので、静脈瘤に食べ物が直接当たったり、刺激されるため静脈が破綻する可能性が常にあるということになります。一旦破裂すると、大量の出血により出血死および出血による肝機能不全に陥ることもあります。従って食道・胃静脈瘤のある患者さんは、定期的に内視鏡検査を受け、静脈瘤が破裂する危険性があるかどうかを確認してもらい、必要であれば予防的な治療を受けることをお勧めします。
- 食道静脈瘤に対する治療の方法
破裂する危険性のある静脈瘤に対しては、予防的に治療を行います。治療には薬物療法と内視鏡治療法がありますが、日本では確実な治療法である内視鏡治療法が行われており、当院でも内視鏡治療法を選択しております。内視鏡治療法にはいくつかの方法がありますが、患者さんの病態にあわせた治療法を行います。内視鏡治療は、入院していただいた上で施行し、約1ヵ月間で治療は終了します(治療は1週間に1回のペースで行い、3回もしくは4回で終了します)。
- 大腸がんはどんな症状がでますか?
大腸がんの自覚症状は、早期がんではまったく症状がありません。大腸内視鏡検を行なわなければ、発見することはできません。血便、便が細くなる(便柱細少)、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状がでたら、進行がんの症状ですので、早期に専門医を受診することをおすすめします。特に血便は痔と勘違いして受診が遅れることもありますので注意しましょう。
- 大腸がんを見つけるにはどのようにしたらいいのですか?
大腸ファイバースコープ(内視鏡)
盲腸までの全大腸をくまなく観察する大腸内視鏡検査が、最も正確な検査法です。高度な狭窄、手術による癒着などがない限り、検査可能です。この検査以外で、早期大腸がんやポリープなどを発見することはできません。また、この検査により、早期がんであれば治療も行うことができます。しかしながら、腸穿孔などの合併症が発生することもあるため、合併症や危険性が高い場合は代わりの注腸検査を行うこともあります。
その他の補助検査
超音波内視鏡
内視鏡の先端に超音波発生装置が付属したものです。大腸腫瘍の進達度を超音波にて診断する方法です。内視鏡的切除術が可能かどうかを決定する前に行います。
腫瘍マーカー
血液検査で早期に大腸がんを発見できる方法はありません。進行がんになると血液中に上昇する腫瘍マーカー、CEAやCA19-9などはありますが、すべての症例で上昇しているわけではなく、また特異性もありません。しかしながら、これらが上昇しているときは、治療の効果を判定するのに有用です。
画像診断(CT、MRI、超音波検査、PETなど)
原発巣の進みぐあいと肝臓や肺、腹膜、骨盤内の転移・再発を調べるために用いられます。また最近、PET検査が注目されています。骨盤CT、骨盤MRIでも判断できないような骨盤内再発の発見や腫瘍マーカーの推移などから転移・再発が疑われますが、CT、MRI、超音波検査などの通常の検査では転移・再発部位が発見できない場合にPET検査で発見される場合があります。
- もし、大腸がんが見つかった時にはどのような治療法がありますか?
治療法には内視鏡的治療、外科療法、放射線療法、化学療法があります。
内視鏡的治療
消化器内科医が中心となって行っている。 内視鏡で観察し、ポリープがあれば切除します。茎のあるポリープはスネアと呼ばれる針金を、首の部分に引っかけ電気で焼き切ります。無茎性、つまり平坦なポリープの場合は、周辺の粘膜を浮き上がらせて広い範囲の粘膜を焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)で摘出します。出血や穿孔の可能性もあるため短期間の入院が必要となる場合があります。摘出したポリープの顕微鏡検査が重要です。ポリープ腺腫や粘膜内にとどまる早期のがんは、これらの方法で簡単に治療することができますが、病理検査で病変が深くまで(粘膜筋板を越えて)拡がっていれば、リンパ節転移の危険性が10%前後生じるため外科療法が必要となります。
外科療法
上記の粘膜下層にまで浸潤した癌では、手術療法が必要となります。肛門までの近さで、人工肛門となる場合もあります。消化器外科へ相談します。 放射線療法
放射線療法
放射線療法は直腸がんの原発巣や骨盤内再発の治療、大腸がんの骨転移、脳転移に行われる場合がほとんどです。また、手術後に骨盤内に再発したがんや疼痛には、放射線療法がしばしば行われます。放射線科に相談します。
化学療法
消化器内科が中心に行っています。患者様の全身状態、病気の進行度、ライフスタイルに応じて抗がん剤を選択しています。当消化器内科では、それぞれの患者様にあった治療、オーダーメイド治療をお勧めしています。
- 大腸がんにかかったものが家族内にいるときは注意したがいいですか?
30歳代の方も10%前後認められ、特に若年者大腸がんは家族や血縁者の中に多発する傾向が認められることがあります。
- 大腸がんの発症には食事の内容と関係ありますか?
大腸がんの発生には、遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きいと考えられています。食生活の急激な欧米化、特に動物性脂肪やタンパク質のとり過ぎが原因ではないかといわれています。
- 大腸がんになりやすい人は具体的にどのような人たちですか?
大腸がんにかかりやすい危険因子として、
1)大腸ポリープになったことがある
2)血縁者の中に大腸がんにかかった人がいる
3)長い間潰瘍性大腸炎にかかっている
4)治りにくい痔瘻(じろう)などの因子 - 逆流性食道炎について
・どんな病気でしょうか?
胃からは消化の助けとなる胃酸が出ています。
食生活をはじめとした生活習慣の欧米化により日本人の胃酸の量は増加しているといわれていますが、この胃酸が胃から食道へ逆流するために起こる病気です。・症状はどんなものがありますか?
むねやけ(胸骨の裏が焼ける感じ)が主です。その他げっぷや苦い水が上がる感じ、はきけ、つかえ感などもあります。慢性的な咳やのどの症状の原因になる場合もあります。
・どのような原因でなりますか?
喫煙や肥満、アルコールなどが関係します。食事では脂肪分の多い食事や甘いものが関係するといわれています。
・検査は?
消化管内視鏡検査(胃カメラ)で食道炎の有無を検査します。食道炎がはっきりせず症状のみがある方(胃・食道逆流症)もいらっしゃいます。
・治療は?
生活習慣の改善や、胃酸を抑えるためのPPI(プロトン・ポンプ・インヒビター)というお薬で治療します。症状に応じて胃の運動をよくする薬や漢方薬を使用する場合もあります。